調理師という生き物(三國シェフの傷害事件)
過日、以下のような報道がされた。
- フレンチの“カリスマ”三國清三シェフが傷害(産経新聞)
この『カリスマ』と称される三國調理師は、 1954年北海道留萌管内増毛町で生まれる。父は漁師、母は農家という家庭の三男坊。詳しく知りたい方はこのブログ(ブログ名:留萌ブログ)に詳しい経歴が記してあるのでそちらでご確認を。
この調理師について私自身、少し前になるが伝手で拝顔したことがある。そのときの印象とすれば、よく見かける笑顔の写真と違う目つきの悪さであった。まぁ、取り巻きにいた男たちの目つきの悪さもかなりの物があり、かなり引いた記憶がある。
その目つきを知っている身としては、この事件が起こったとの報道を見た瞬間、至極当然という感覚だけが生じていた。それに加えてある程度の権力を握った調理師の行動を聞き及んでいるから尚更である。
その中の一つを例示すると、従業員が誰から見ても正当な主張をしているにもかかわらず、それに対しての反論ができなくなった途端にその上司に当たる調理師は、従業員につかみかかって殴ろうとした、という物で、そのときふるわれた拳は、幸いにもその従業員の頭を擦っただけで済んだ。
それに類する話は、よく耳にする。結局のところそれは曲がった『師弟関係』がなせる技なのかもしれない。確かに調理師の世界には、中卒などの年端のいかない子供が入ってくることがある。幾ら社会に出たとはいえ、社会の右も左も分からない子供を相手にするときには、多少なりとも厳しさを教えなければならないだろう。たぶん、この調理師も15歳で調理師の道を選んだのだからそのようなことも経験してきたと考える。
そのような経験をした場合、ある程度きちんとした学業と経験を修めてきた人は、自分が上司になったときには、もっと他の方法という物を考えて指導をする。しかしある程度以下の学業や経験しか修めてきていない人間は、別の指導方法を考えるだけの知識が無く、自分も同じようにしか指導ができない。これは、家内制手工業的な小さい会社では問題はないが、ある程度以上の規模の会社になったときには、その人にとって致命的な欠点となる。
この事案の場合、その社員に対して幾度となく指導をしていたとあることから、そのうちの幾度かは同様な暴力行為が行われていた恐れが考えられる。
ゲンダイネットには、
シェフは部下の仕事が遅いことにイラ立って殴ったらしいが、イライラの理由はほかにもあった。バブル期にもてはやされたミクニは事業の拡大路線に走り、手を広げすぎて「味が落ちた」と客足も減り、さらにはイタリアンの人気に押されて苦戦。経営者としてストレスがたまっていたのでないかともっぱらだ
と、ストレスの八つ当たりで社員に対して暴行を働いたとの観測を示している。仕事が遅いことに苛立つのは、調理師の思考原理に『考えるな、まずは動け』という場当たり的な物が存在していることも原因であるから強ち間違いないであろう
ただ一つ間違いがあるとすれば、『手を広げすぎて「味が落ちた」と客足も減り』との記述があるが、元々三國調理師は、美味しい物を作っていたわけではない。そのことは、昭和60年に開業した東京・四谷の仏料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店当初に行った人の話によると、『大したことがなかった。』との感想を述べている。
確かにそれまでのフレンチとは違い、素材の味などをそのまま出している野趣あふれる料理法は、見た目など特筆するに値するが、それは三國調理師の幼いときの食生活が根本であり、それ以上の物ではなかった。
確かに料理を見る限りにおいて手先の器用さはあるようだが、味覚に至っては少々難ありというのが本当のところだろう。札幌のステラプレイス(札幌駅ビル)のレストランもローカル報道では褒め称えているが、それ以外のところからあまり芳しい話を聞いたことがない。その点からも『客足も減る』のは、必然であったと考える。
またこの様な状態になってしまった原因は、『食に関する知識不足』という致命的欠陥がそうさせていると考える。少し前にTV番組に出演した三國調理師は、ある魚介類を示して『このあたりのは天然物だから旨いんだ』などというコメントをはいていたが、実際そこは、かなり前から養殖してある程度成長させた子供を海に放しているところで、本当の意味での『天然物』ではなかった。
このことが誰も知らないような情報であるならそういう間違いも致し方がないが、『食』に関わる人間にとっては周知の事実にもなっている情報であり、間違うこと自体恥ずかしい物だ。特に『食』に関してこだわりを持っているように振る舞っていて、発言がある程度以上の影響力を持つならそれくらいの情報を得ていないといけない。
結局のところ、客足が減った原因は、『味』という因子ではなく、『底の浅さ』に客が気づき始めたと言っても過言ではないだろう。幾ら夫人が政に長けていると言っても露出している人間の不出来まではどうしようもない。
話をこの事案に戻すと、47歳(報道によっては46歳)の営業担当のスーパーバイザーであった被害者社員を周囲に他人がいるにもかかわらず平手打ちではなく拳で殴ったとなれば、激昂したと言う理由もにわかに信じられない。それも利き手ではなく左手でというからには、元々その社員を殴るつもりがあったと考える方が普通であろう。それとも三國調理師は、他人を殴ることが癖になっていたのだろうか。もしそうなら救われない性質である。
そうでないにしろ少々勘ぐらせていただくと、経営不振とまでは行かないが、思うように右肩が上がらない状態の経営が続き、『あの料理では客は呼べない』と社内での求心力が失われてきていたのかもしれない。そこでそれを取り戻すために少し脅してやろうと考えたが、それは一般的に受け入れられる行為ではなかったと言うところだろう。
考えれば、封建的な調理師の世界ならこの様な告発を受けなかったかもしれない。周囲から持て囃され自身の身の丈を考えずに調理以外のことに手を出したため生じた事案であり、自己陶酔さえしなければ防げた不憫な話でもある。
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